「何を、どのタイミングで、どう伝えるべきか分からない」
──そんな不安を抱える新人の方に向けて、報連相の基本から、伝え方のコツ、実践しやすい習慣までを解説します。
うまく伝えられるようになることで、怒られることが減り、信頼が自然と積み上がっていきます。
報連相とは?まずは基本を押さえよう

報告・連絡・相談のちがい
「報連相」とは、「報告・連絡・相談」の頭文字を取った言葉です。
それぞれ意味と目的が少しずつ異なります。
区分 | 内容 | 主な目的 |
報告 | 上司への業務進捗や結果の共有 | 現状を把握してもらうため |
連絡 | 必要な情報の共有・伝達 | チーム内での情報をそろえるため |
相談 | 判断に迷った時の確認・意見を求める行為 | 誤判断を避け、より良い結果を得るため |
3つの違いを理解していないと、「これは相談?報告?」と混乱することがあります。まずは目的から整理するのがおすすめです。
上司や先輩が求めているのは結果だけじゃない
新人のうちは「成果が出てから言おう」と考えてしまいがちですが、上司や先輩が知りたいのは、途中経過や気づき、悩みも含まれます。
たとえば「お客様対応で少し不安なことがありました」といった段階の共有も、立派な報連相です。
完了してから伝えるのではなく、「今どこまで進んでいるか」「どんなことに迷っているか」を共有するほうが、上司にとっても助かる情報になります。
ひとりで抱え込むより、共有する姿勢が信頼に変わる
社会人として「自分で考えて動く」ことはもちろん大切です。
しかし、すべてをひとりで抱え込むのは、かえって仕事の遅れやミスにつながることがあります。
小さなことでも共有しておくことで、「この人はきちんと見通しを持って行動しているな」と信頼されやすくなります。
なぜ報連相が大事なのか

周囲から頼られる人ほど、こまめに伝えている
「頼りがいのある人」とは、知識やスキルがあるだけでなく、まわりとの情報共有を丁寧にできる人でもあります。
日々の会話の中で、
「この件、昨日こんな動きがありました」
「先方から◯◯の確認がありました」
といった、ほんのひと言を積み重ねるだけで、社内での信頼感は着実に高まります。
過程や気づきも「報告対象」になる
報告は「結果だけ」を伝えるものではありません。
むしろ、プロセスや気づきの共有こそ重要な報連相の一部です。
たとえば営業中に「このお客様、料金よりサポート体制を重視しているな」と思った場合、それを報告することで、チーム全体が対応のヒントを得られます。
見えていない仕事は、評価されにくい
あなたがどれだけ丁寧に仕事をしていても、伝わっていなければ「やってない」と思われてしまうことがあります。
報連相は、自分の仕事を正しく評価してもらうためにも必要な行動です。
自信がないときほど、「ここまで進めました」と、少しだけでも報告してみましょう。
報告は「完了してから」では遅いこともある

途中経過でも状況を伝えるのがポイント
「終わったら報告しよう」と思っていたら、タイミングを逃してしまった──そんな経験はありませんか?
業務によっては、途中での報告がベストなタイミングになることもあります。
たとえば、
- 「明日中に完了予定です」
- 「A案で進めておりますが、B案も再確認しています」
といった進行中の情報も、立派な報告内容です。
最初に結論を、その後に理由や経緯を
報告をするときは、「〜だと思います」よりも「〜です」と結論から伝えることで、聞く側が理解しやすくなります。
例
「今週の営業目標、5件中3件達成できました。残り2件は明日以降に動きます」
このように、結論+要点を先に出すことで、必要な確認やアドバイスももらいやすくなります。
チャットで伝えるときは箇条書きでも十分
口頭での報告が難しいときは、LINEやSlackなどのチャットを活用してもOKです。
ただし、長文になりすぎないように注意しましょう。
箇条書きで「結論→理由→補足」など、要点をまとめておくと、相手も読みやすくなります。
連絡は「気づかいの見える化」になる

報告との違いは、目的にある
報告は「進捗や結果の共有」ですが、連絡は「情報の共有・確認」が主な目的です。
たとえば、こんなやりとりが連絡に該当します。
- 「本日◯◯様がご来店予定です」
- 「15時から社外訪問に出ます。戻りは17時頃です」
このように、「周囲が気づかないと困ること」を伝えることが連絡の役割です。
ひとことを添えるだけで印象は大きく変わる
たとえば、退勤時に
- 「お先に失礼します」だけでなく
- 「本日◯◯の案件まで完了しました。明日は朝イチで△△対応します」
と一言添えるだけで、ぐっと丁寧な印象になります。
チャットの場合も「了解です!」だけでなく、「◯◯の件、了解いたしました。明日朝に確認いたします」など、相手が状況を把握しやすくなる表現を心がけましょう。
必要な人に、必要なタイミングで届ける意識を持とう
連絡は、「全体に送ればいい」というものではありません。
- 誰が
- どのタイミングで
- どんな情報を求めているか
を考えて連絡できるようになると、気が利く人と評価されやすくなります。
相談は「頼ること」ではなく「仕事を進めるための選択肢」

すみません、ではなく「ご相談させてください」と伝える
相談をすることに対して「迷惑かもしれない」と感じる方も多いですが、相談はマイナスではなく、前向きな行動です。
謝るよりも、「ご相談させてください」と声をかけるほうが、信頼されやすくなります。
質問の前に、まずは自分なりの考えを持っておく
何も調べずに「どうしたらいいですか?」と聞くよりも、
「A案とB案で迷っています。私としてはA案が適切だと思っていますが、いかがでしょうか?」
と伝えるほうが、主体性を持って相談していると受け取られます。
たった5秒でもいい、声をかけるタイミングを逃さない
「話しかけるのが申し訳ない」「タイミングが分からない」と感じたら、
まずは「今、お時間よろしいでしょうか?」と短く声をかけるだけでも十分です。
上司や先輩の手が空いたタイミングで、自然に相談できるようになります。
うまくいく人は、報連相のタイミングが絶妙

早すぎても、遅すぎても、相手の判断を鈍らせる
報告や相談のタイミングを間違えると、かえって混乱や指示ミスを引き起こしてしまいます。
たとえば、
「10時に伝えておけばスムーズに動けたのに、15時に言われたから対応が遅れた」
というケースはよくあります。
一方で、早すぎる段階で未確定の情報を伝えても、「結局どうなったの?」と手間を増やしてしまうこともあります。
“ちょうどいいタイミング”を見極めるには、相手の動きや全体の流れを見る力が必要です。
「今のうちに共有しておきます」が便利な一言
相談や報告を入れるとき、「今のうちにお伝えしておきます」という言葉は非常に便利です。
この一言があるだけで、
- 「急がせてる感じがしない」
- 「先回りして動けている」
という印象を持たれやすくなります。
例「お客様から明日ご来店予定とのご連絡がありました。今のうちに共有しておきます。」
こうした声かけが、上司やチームからの信頼に繋がります。
伝える手段とタイミングの相性を考える(口頭/チャット/日報)
情報の内容や緊急度によって、伝え方を使い分ける意識を持つと報連相の質が一段上がります。
内容 | 手段 | 備考 |
今すぐ共有したい | 口頭/電話 | 即対応してほしい場合に最適 |
明日以降の予定 | チャット | 文章に残しておくと便利 |
その日の業務全体 | 日報 | 全体の整理・報告に向いている |
「伝わらない人」に共通するパターン

順番が逆(いきなり理由から入ってしまう)
話し出しが「なんかちょっと思ったんですけど…」のように理由や背景から入ると、結局何が言いたいのか分からなくなってしまいます。
報連相では「結論ファースト」が基本です。
例
×「昨日◯◯の件で少し行き違いがあって、確認しようか迷ったんですけど…」
○「◯◯について確認が必要です。その理由が…」
情報が足りない(数字・主語・期限が抜けている)
「納品の件、大丈夫そうです」という報告だけでは、何が、いつまでに、どういう状態なのかが不明確です。
以下の3点が抜けると、“伝えたつもり”でも相手には伝わっていないことが多くなります。
- 主語(誰が/何が)
- 期限(いつまでに)
- 数字(進捗量/件数など)
「で、何をしてほしいのか」がわからない
報連相のゴールは、“聞いた相手が動きやすくなること”です。
話し終わったあとに「で、これはどうすればいい?」と聞かれてしまうのは、まだ改善の余地ありです。
- 「ご確認いただきたい」
- 「ご判断を仰ぎたい」
- 「アドバイスをいただけると助かります」
など、目的を明確に添えて締めくくりましょう。
言いにくいことを伝えるコツ

失敗の報告こそ、早さと誠意が大切
ミスやトラブルが起きたときこそ、できるだけ早く、かつ丁寧に伝えることが信頼に繋がります。
「ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。現在の状況と対応についてご報告いたします。」
最初に謝意を伝えることで、相手の受け取り方も柔らかくなります。
伝える順序は「謝罪→現状→対処案」
報告の型としておすすめなのが以下の順番です。
- 謝罪(先に気持ちを伝える)
- 状況(いつ、何が起きたか)
- 対応策(すでに行動している内容)
この順番を守ることで、ただ謝るだけでなく、「すでに動いている」「解決に向けて前向きである」という印象を与えることができます。
「怒られたくない」と思う時こそ、すぐ相談しよう
相談をためらう理由の多くは、「怒られたらどうしよう」という不安です。
しかし実際は、早く相談した方が怒られにくいという事実があります。
遅くなればなるほど、
- 被害が広がってしまった
- 手遅れで対応できなくなった
という事態に発展しやすくなります。
現場で使える報連相の言い回し例

報告:「〜まで進みました」「次は〜に着手します」
- 「本日◯件中、2件まで対応完了いたしました」
- 「明日はA社の案件に着手いたします」
進捗や予定が伝わる報告は、非常にありがたい存在になります。
連絡:「ただいま外出中です」「◯時に戻ります」
- 「今、オフィスに向かっております。到着予定は15:30です」
- 「お昼休憩に入ります。13時には戻ります」
連絡は、事務的すぎない“ひとこと”を添えると、感じのよさがアップします。
相談:「A案とB案がありますが、どちらが適切でしょうか?」
- 「A社とB社の対応について、ご相談させていただけますでしょうか」
- 「A案とB案で迷っています。私はA案が良いと考えていますが、ご意見をいただけますと助かります」
相談は、「自分で考えた上で、選んでもらう」形にすると、信頼度が高まります。
🔍用語
項目 説明 例 オープンクエスチョン 相手の自由な意見や考えを引き出す質問 「どうすればよいと思いますか?」「今回の件、どう感じましたか?」 クローズドクエスチョン 選択肢やYes/Noなど、限定された答えを求める質問 「AとB、どちらにしますか?」「やりますか?やりませんか?」
報連相が自然にできる人になるための習慣

1日1回だけでも「今の状況」を言語化してみる
毎日完璧に報連相をするのは難しく感じるかもしれませんが、
1日1回、「今日やったこと」「困っていること」を言葉にしてみるだけでも変わってきます。
文章にしておくと、報告のタイミングでそのまま伝えることも可能です。
相手に合わせて、伝え方の温度感を変えていく
上司やチームメンバーの中でも、
- 口頭でさっと聞きたいタイプ
- 文章で整理されていた方が嬉しいタイプ
など、伝えやすいスタイルは人によって違います。
「この人はチャットで簡潔に送ると喜ぶな」
「この人は口頭で一言添えた方が良さそうだな」
といった観察力も、報連相を自然にするコツです。
思いついたことを“すぐ共有”できるようメモを活用する
「これ、あとで報告しよう」と思っても、いざ時間ができたときには忘れている──よくあることです。
その場でチャットに入れる、またはメモ帳に簡単に残す習慣をつけておくと、報連相の「スムーズさ」と「抜け漏れ防止」につながります。
まとめ|報連相は「信頼をつくる技術」です
報連相は、「やらなきゃ怒られるから」するものではありません。
むしろ、「信頼されたいから」「安心してもらいたいから」こそ、先に動くべき行動です。
- 結果だけでなく、途中経過や迷いも伝える
- 自分なりの考えを持って相談する
- 伝えるタイミングや手段を工夫する
これらを少しずつ意識することで、あなたの印象は確実に良くなります。
今日から、ひとつだけでも実践してみてくださいね。